WW2航空機の性能:WarbirdPerformanceBlog

第二次大戦中の日本軍航空機を中心に、その性能を探ります。

カテゴリ: 性能/Performance

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 100式司令部偵察機(キ-46/Dinah)
・輸送機
 100式輸送機(キ-57/Ki-57)

エンジン一覧(24/12/16追記)
 https://docs.google.com/spreadsheets/d/1-sdBUJIxKHcDvH3tNYwHa3mN64BLQBEfA0218Q44W9E/edit?usp=sharing

はじめに
 F6F「ヘルキャット」とF4U「コルセア」といえば、第二次大戦中の米海軍の主力戦闘機です。その両者のどちらが優秀かという点については、常に議論が行われています。しかし、一般的にはヘルキャットは艦上機として扱いやすく格闘戦も可能なかわりにコルセアに比べて低速で、一方のコルセアは扱いに癖があるものの速度に優れるといった印象を持たれているのではないでしょうか。
 しかしながら、果たしてそれは本当なのでしょうか。同じ性能のエンジンを搭載し、同じような大きさの両機にどこまで速度差がつくのでしょうか。今回は、両機の実測値を比較しながらこの疑問について考えてみたいと思います。
 なお、今回はF6F-3/5とF4U-1の比較とします。なぜならばF4U-1の搭載するR-2800-8エンジンとF6F-3/5のR-2800-10エンジンでは馬力性能が同一ですが、F4U-4以降ではエンジン性能がかなり向上しており、もはや今回のテーマには不適だからです。

両機の諸元比較
F6FandF4U
 それでは両機の諸元を簡単に比較してみましょう。上記のデータは、両機のAircraft Characteristics & Performance(記事の途中にリンクあります)から抜き出していますが、コルセアについては寸法データがこまかかったので四捨五入しています。
 さて、上の表を見比べてみると、両者にはほとんど差がないことが分かります。ただし、翼面積はややコルセアの方が小さく、重量も軽そうです。また、コルセアは胴体の断面積をエンジン直径ギリギリに切り詰めていますから、前面投影面積という点でもコルセアに分があります。
 また、ヘルキャットは排気管が推力式になっていますが、F4U-1の時点ではコルセアはまだ推力式にはなっていないことは、このあと最高速度を比較していくなかで考慮しておくべきポイントのひとつです。

エンジンの説明
R2800
 続いて、両機の搭載するエンジンについても触れておきましょう。「ダブルワスプ」と呼ばれるこのエンジンは、空冷星型18気筒で離陸時には2000馬力を発揮するエンジンです。
 過給機は2段2速式となっており、初段過給機のギアは2速、二段目は固定式となっています。低高度では2段目だけを作動させる「ニュートラル」、中高度では初段を1速にした「ロー」、高高度では2速にした「ハイ」の三つを飛行高度によって使い分けます。このため、馬力(=最高速)のグラフでは、三つのピークを持つことになります。
 また、運転条件に関しては、離陸(take-off)、戦時緊急(war emergency)、軍用(military)、常用(normal)の4種類が設定されており、常用運転以外は時間制限が設けられています。また、戦時緊急出力運転については水噴射装置が必要となります。前述のように、ヘルキャットは-10、コルセアは-8を搭載していましたが、両者の違いは気化器の取り付け位置や空気流路などで、発動機の性能自体には違いはないと言ってよいと思います。

最高速度:ヘルキャット
F6F
 それでは本題に入ります。まずはF6Fヘルキャットの最高速度性能を見ていきましょう。上記のグラフは、いつものようにWWII Aircraft Performance様で紹介されているデータをまとめたものです。このままでは見づらいと思いますので、いつものように別タブで開いて頂くようお願い致します。
 ここで抜き出したデータは、米英軍による試験での実測値と、Aircraft Charasteristics and PerformanceやStandard Aircraft Characteristicsと呼ばれる米海軍作成のデータ表に基づいています。なお、同サイトには最高速度に関するデータとして、企業作成の仕様書や気化器関連の実験データもありますが、それは含めませんでした。また、2速過給機の速度データがないものも含んでいません。以下、リンクを貼ります。
ヘルキャットのページ
それぞれのデータ:          

 さて、この表はヘルキャットの2速過給機使用時の最高速度を示しています(原文が英語だったのでそのまま英語で作ってしまいました。見にくかったら申し訳ありません)。また、試験時の機体の状態もわかる範囲で書いています。というのも、時期によってヘルキャットの外形には差があり、パイロンの有無なども試験結果に大きな影響を及ぼすからです。
 まず"cowl type"ですが、ヘルキャットのカウリングには大きく分けて3種類があります:F6F-3初期の排気管直前に膨らみがあってカウルフラップが下面にもあるタイプ、-3後期の排気管直前に膨らみがあるが下面のカウルフラップがないタイプ、-5 のそのどちらもないタイプです。
F6Fearlytype
F6Flatetype
 ただ、試験レポートに添付されている写真では下面のカウルフラップの有無の判別が難しいので、今回は排気管直前の膨らみがあるものを"early"、ないものを"late"としています。
 "windshield"は、風防のことです。上の写真のように、前期型と後期型では前面のガラスの形状が異なります。
 "muzzle cover"とは、機関銃の砲口のカバーのことです。基本的には日本でも試験時にはこのようなカバーをして計測していたはずで、二式水戦の試験結果では、カバーがないと4ノット程度速度が低下していました。
 "pylon"は読んで字のごとくです。ヘルキャットには主翼下にそれぞれ1か所ずつ爆弾用のパイロンがありました。そのほかロケット弾用のレールや胴体下には増槽用の懸吊架がありました。

 では、具体的な最高速度の中身を見ていきましょう。まずF6F-3についてですが、④は20mm機関砲装備型でパイロンも右翼下に付いているので他より多少遅いのですが、それ以外の①~⑥に関しては軍用出力で380mph前後を記録していることが分かります。ただ、備考の欄に記入したようにヘルキャットには気化器に問題があったようで、②や③でこのような問題に遭遇しています。
 ⑥を見ると、実測値ではありませんが戦時緊急出力において、パイロンの有無で12mphの差が生じています。単純計算で1つ6mphとすると、全開高度の差を無視すれば一応④と⑤の速度差ピッタリにはなります。ですが、①や②と③、⑤を比較しても、カウリングや風防の違いによるはっきりとした性能差はいまいち読み取れません。ちなみに⑦は英軍仕様のF6F-3です。

 いっぽうF6F-5を見てみると、⑧で一気に391mphまで速度が向上しています。⑨は両翼のパイロンおよびロケットランチャーを装備していますので、その分を加味するとクリーン状態ではやはり390mph程度になるかと思います。⑩についても同様です。
 ⑧のレポート内にて、以前のF6F-3との速度差についても考察されていますが、そこではカウリングと塗装仕上げの変更による空気抵抗の低下が主原因とされています。先に貼った写真のように、確かに米海軍の塗装は大戦途中に変わっています。しかも⑧はパイロンも片方付いていますから、標準的なクリーン状態のF6F-5は軍用出力で390mph以上を出せていたと考えて良いのではないでしょうか。-3と比較して、約10mphの速度向上といった感じです。
 ちなみに⑧では、以前と比較してピトー管の静圧の取る位置を変えているみたいです("Relocation of the pitot tube static line"とあります)。このおかげで誤差が小さくなったようですが、話によると、このピトー管の問題でヘルキャットの速度が低めに計算されていたという話もあるようですので、10mphの速度向上にはこの影響も幾分あるかもしれません。
 ⑪は英軍仕様のF6F-5です。不思議と、⑦も⑪も英軍が計測したものは米軍のものよりも性能が悪くなっています。加えて⑪は軍用出力の全開高度が1500ft(約500m)近く低くなっています。なぜでしょうか?

最高速度:コルセア
F4U
 続いて、コルセアの性能を見ていきます。これもヘルキャット同様、WWII Aircraft Performance様のサイトより性能試験時およびACPの2速過給機使用時の最高速度を抜粋しています。
コルセアのページ
それぞれのデータ:      

 ヘルキャットと同様、コルセアもF4U-1のバリエーション内でいくつかの差異があります。その代表的なものがキャノピー(canopy)です。上の写真はいわゆる「バードケージ」と呼ばれる枠の多いタイプですが、後期生産型は下の写真のように枠の少ないバブルキャノピーに変更されています。
birdcage
bubblecanopy
 また、地上滑走時の視界向上のため尾輪(tail wheel)の高さも高められました。初期の機体は尾輪がすっぽり胴体内に収まっているのに対し、途中から尾輪タイヤが格納時でも少しはみ出しているのは、このせいでしょうか。ちなみに、このような改修が施された後期生産型は、非公式にF4U-1Aと呼称されています。F4U-1Dは爆弾やロケット弾の搭載が可能となった戦闘爆撃機型です。はっきりした時期は不明ですが、プロペラ(propeller)も13ft4inのものから、より効率の良い13ft1inのものに変更されています。
 F3Aはブリュースター社製造のF4Uのことで(その中でもF4U-1のブ社製造分なのでF3A-1とすべきでした。失礼いたしました。)、FG-1はグッドイヤー社製造のF4U-1のことです。また、Corsair IIは英海軍用に翼端が切断されたF4U-1で、Corsair IVは同様にFG-1の英海軍向けのことを指します。翼端を少し短くしなければ、英海軍空母の格納庫の天井につっかえてしまうのだそうです。

 さて、具体的なデータを見ていきましょう。①、③、④を見る限り、13ft4inのプロペラを装備している機体は軍用出力で390~395mphを計測していることが分かります。また、初期型風防の方が、アレスティング・フック(arresting hook)が無い方が良い成績を残しているように見えますが、尾輪の高さについてはそこまではっきりした差は見られません。一方で英軍計測の⑥は①、③、④よりも10mph低速です。
 ②については、その他の機体と比較して大幅な性能向上が見られます。このことについて、試験報告書では①と比較したうえでプロペラ効率の増大と、アレスティング・フックの有無やカウル・フラップの形状変更などによる抵抗減少をその要因に挙げています。
 ⑤は実測値ではないものの、実際の試験を基に作成されておりコルセアの一種の公式スペックと見ることができます。プロペラがどちらなのかは不明ですが、性能や添付の図を見る限りは13ft1inのものと考えてよさそうです。ちなみにF4U-1のACPもあるのですが、そこでは軍用出力の最高速度は407mph@23900ft、戦時緊急では417mph@19900ftとしています。なお、パイロン等はないクリーン状態と思われます。
 要するに、13ft1inのプロペラを装備した機体は、クリーン状態の軍用出力で410mph前後は出せるのではないでしょうか。また、水噴射時は420mph前後を発揮できるものと考えられます。
 ここでも不思議なことに、英軍計測の⑦は新型プロペラ装備にもかかわらず、米軍よりも10mph程度低速となっています。

まとめ:両者の比較
 ここまで見てきたところで、両者の比較をしてまとめたいと思います。タイトルにもある、ヘルキャットとコルセアのどちらが速い?という疑問について答えるとすると、少なくともF6F-5と13ft4inのプロペラを装備したF4U-1の間には、ほとんど最高速度に差はないと考えてよいと思います。
F6FvsF4U
 これは、F6Fの⑧とF4Uの③の軍用出力時の速度を比較したものです。この時のF6F-5はニュートラルで馬力が出なかったことが報告されているので点線で示しましたが、ローおよびハイ時での速度差がほとんどないことが分かってもらえるのではと思います。(ニュートラルでも本来の馬力が出ていれば低速での速度差はもっと減ると思いますが、コルセアの方がニュートラルでの全開高度が少し高いのでその分ヘルキャットは不利かもしれません。)
 さて、諸元の比較でも触れたようにヘルキャットの方が空気抵抗が大きいにも関わらず、なぜこのような結果になったのか考えてみると、ひとつは排気管がヘルキャットでは推力式であった一方でF4U-1では非推力式であったことが挙げられると思います。また、プロペラの換装でコルセアが大きく性能を向上させていることから、プロペラに効率の差があったかもしれません。そのため、13ft1inのプロペラを装備するコルセアには、ヘルキャットはもう追いつけなくなってしまいます。また、先に触れたようにもしかしたらピトー管の問題もあるかもしれません。

 ところで、新たな疑問もいくつか浮上してきました。そのひとつは、戦時緊急出力使用時の速度向上幅です。米軍データでは、ヘルキャットは軍用出力時と戦時緊急出力時の速度差がほとんどない一方でコルセアについては15mph近い速度向上が見られるのです。これもプロペラの問題でしょうか。
 もうひとつは、米軍の試験値と英軍の試験値に差が見られるという点です。今さっきの戦時緊急出力の性能向上幅という点でいえば、英軍の試験に基づくとヘルキャットの方が大きいですし、なにより一貫して英軍の速度データの方が米軍のものよりも低くなっています。この原因はよく分かりません。もしかしたら機体の外表面の状態などが英軍の方がより実戦に近かったのかもしれませんし、標準大気状態に補正する際や空気の圧縮性に関する計算方法が米英で少し違うのかもしれません。そういえば、FW190Aの速度性能を考察した記事でも、米軍試験値は英軍試験値よりも良い結果となっていました。別々の国同士の試験結果をそのまま比較することの危うさを改めて痛感しています。

 ということで、今回はヘルキャットとコルセアの最高速度について考えてみました。両者は永遠のライバルといった感じで、その優劣論争はこの先も続きそうですが、意外とコルセアの方が常に優速というわけではないんだということが今回判明しました。しかし、戦闘機の良しあしは速度だけではありません。皆さんも色々な観点から両者を比較してみてはいかがでしょうか。
 今回も最後までお読み頂きありがとうございました。感想・疑問・異論・反論なんでもお待ちしております。どうぞお気軽にコメント頂ければ幸いでです。

はじめに
 約1年前に一式陸攻の性能に関する記事を書きましたが、二四型と桜花搭載型である二四丁型の性能を入手したので補足記事として新たに投稿します。

一式陸攻二四型の性能
機体:一式陸上攻撃機二四型(1号機)
重量:12500kg
発動機:火星二五型
飛行性能:
高度       最高速度
(Alt.)      (Max. speed)
      0m   約209.0kt(387km/h)
1000m   約217.5kt(403km/h)
2000m   約228.5kt(422km/h)
2400m   約232.0kt(430km/h)
3000m   約231.0kt(428km/h)
4000m           約229.0kt(424km/h)
5000m   約237.0kt(439km/h)
5100m   約238.0kt(441km/h)
6000m   約234.5kt(433km/h)
7000m   約224.5kt(416km/h)
8000m   約211.0kt(391km/h)
実用上昇限度:8125m
絶対上昇限度:9400m

一式陸攻二四丁型の性能
機体:一式陸上攻撃機二四型(試製桜花装備)(95号機)
重量:14500kg
発動機:火星二五型
飛行性能:
高度       最高速度
(Alt.)      (Max. speed)
      0m   約186.0kt(345km/h)
1000m   約194.5kt(360km/h)
2000m   約204.5kt(379km/h)
2050m   約205.0kt(380km/h)
3000m   約202.0kt(374km/h)
4000m           約208.0kt(385km/h)
4550m   約214.0kt(396km/h)
5000m   約211.0kt(391km/h)
6000m   約201.5kt(373km/h)
7000m   約189.0kt(350km/h)
実用上昇限度:6280m
絶対上昇限度:7250m

補足説明
 上記データは、防衛研究所がオンライン上で公開している資料内にあるグラフから拾ったものですのであえて「約」という文字を付けています。ニ四丁型の実用上昇限度を、前回記事では7250mとしてしまいましたが、このように6280mが正解となりますので、ここで訂正いたします。

 おまけに、今回紹介した一式陸攻二四型第1号機と、過去に紹介した一式陸攻一三型第948号機および銀河一一型第187号機との速度性能を比較したグラフを作ってみました。
G4M速度比較
 一式陸攻二四型は、一三型に対してほぼ全高度帯で低速です。一三型は偵察状態なので重量は9500kgで、一方の二四型は12500kgなので、その重量差は3トンありますが、一三型がもし攻撃状態であればどちらも総重量は12500kgとなり、過去記事から最高速度の差もほとんどなくなるものと思われます。ということはつまり、二四型は防御能力の改善はあったものの、せっかくのエンジン馬力向上分をまったく速度性能向上に振り分けることができなかったということになります。また、銀河が一式陸攻とは比べ物にならないほど優速であることも分かります。

ソース
『空技廠機密第18号 昭和20年1月2日 試製櫻花実験概報(試製櫻花装備陸攻空中性能測定成績)提出』(『航空関係軍備 3/3』より)
請求記号 ⑤航空部隊-航空本部-75

『十五試双発陸上爆撃機実験(第四回報告)』空技廠・横空 昭和19年12月5日 より

・十五試双発陸上爆撃機(空技廠第3号機)

重量
 正規(normal) 9900kg
飛行性能
 最高速度
  5000m 287.5kt(532km/h)
  5900m 300.0kt(556km/h)
 上昇時間
  5000mまで 8分13秒


・試製銀河(中島第187号機)

主要寸法
 全長(length) 15.000m
 全幅(span) 20.000m
 全高(height) 5.270m(水平)
                4.300m(3点)

重量
 自重(empty) 7261kg
 正規(normal) 10500kg
 満載偵察(overload) 12242kg
 超過荷重(max. overload) 13372kg

発動機
 名称 誉11型(Homare 11)×2
 出力(output)
  離昇(take-off):1820PS@0m 2900RPM +400mmHg
  公称(rated):1650PS@2000m 2900RPM +250mmHg
        1440PS@5700m 2900RPM +250mmHg

プロペラ
 直径(diameter) 3.5m
 ピッチ変更角(pitch angle) 27°~51°

飛行性能
 速度性能(speed performance)
高度      最高速度       回転数   吸気圧力
(Alt.)     (Max. speed)      (RPM)    (mmHg)
      0m   237.0kt(439km/h)    2900    +250
1000m   250.0kt(463km/h)    2900    +250
2000m   262.5kt(486km/h)    2900    +250
2660m   271.0kt(502km/h)    2900    +250
3000m   271.0kt(502km/h)    2900    +211
4000m   270.0kt(500km/h)    2900    +250
5000m   283.0kt(524km/h)    2900    +250
5720m   292.0kt(541km/h)    2900    +250
6000m   289.5kt(536km/h)    2900    +215
7000m   278.0kt(515km/h)    2900    +97
8000m   264.0kt(489km/h)    2900    -15
9000m   246.5kt(457km/h)    2900    -118

 ※戦闘馬力試験成績
高度      最高速度       回転数   吸気圧力
(Alt.)     (Max. speed)      (RPM)    (mmHg)
1520m   250.4kt(464km/h)    2900    +250
1520m   267.1kt(495km/h)    2900    +400

 上昇性能(climbing speed)
高度    上昇時間    回転数   吸気圧力
(Alt.)     (clim. time)     (RPM)    (mmHg)
1000m   1'41"    2900    +250
2000m   3'25"    2900    +250
3000m   5'14"    2900    +148
4000m   7'17"    2900    +250
5000m   9'23"    2900    +250
6000m   11'38"          2900    +152
7000m   14'29"       2900    +42
8000m   18'23"       2900    -59
9960m   39'18" (service ceiling)


ソース(source)   『十五試双発陸上爆撃機実験(第四回報告)』航空図書館蔵
          "Examination report on 15-shi twin-engined land bomber"
          (Aeronautic Library)

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解説とコメント
 今回紹介した資料は空技廠による試験成績報告書で、原本は東京新橋の航空図書館に所蔵されています。この記事ではそのごく一部分を紹介しています。海軍の航空機は全てこのような性能試験報告書が作成されているはずなのですが、残念ながら銀河のほかに現存しているのは私の知る限り零水偵2式水戦などごくわずかです。

 さて、この報告書は空技廠製の試作3号機と比較して生産型である中島製第187号機の性能を確認することが目的でしたが、重量増加に伴う性能低下はあるものの実用に差し支えなしとの結論を得ています。
 試作機と生産機の差異については報告書内で詳細には触れられてはいませんが、具体的には、
・全備重量が生産機の方が600kg重い
・試作機は(推力式)集合排出管、生産機は単排出管
・尾輪が試作機は格納式、生産機は固定式
などが挙げられます。加えて工作精度の低下もあったものと思われます。結果として、生産機は試作機と比較して8ノットの速度低下があったようです。

 この報告書で興味深いのは、戦闘馬力の試験も実施されていることです。+400mmHg時は+250mmHg時と比べて高度1520mで約17ノットの増速効果を得ています。
 以下のグラフでは、青い丸および実線で187号機の速度性能を示しています。一方で戦闘馬力実験時の+400mmHgを赤丸で、+250mmHgを水色の丸で示しましています。グラフを見てもらえばわかるように戦闘馬力時の速度はもうちょっと出せそうですので、私の推定性能を赤い点線で示しています。なお、2速時の試験はなされなかった模様です。
P1Y1#187
 ところでこのグラフを見ていて思うのが、2速時の全開高度以上の速度低下が1速時と比べて急なんですよね。四式戦でも同様の傾向が見られるので、誉発動機の特徴と言えるかと思います。(参考記事)

 今回は以上になります。最後までお読みいただきありがとうございました。

はじめに
 みなさんご無沙汰しております。前回の記事で一か月に一度は更新したいと書いておきながら、できなかった愚か者です。2回のワクチン接種が完了したので早速遠征して資料の収集をしたいと思っていたのですが、東京はじめ各地で感染が拡大し、思うように動けませんでした。
 さて、今回は100式輸送機(MC-20)の性能を共有したいと思います。「丸」9月号が97式重爆でしたのでそれに便乗して、派生型である100式輸送機にしました。「丸」の本文中にMC-20の取説は戦時中に市販されていたという記述があったかと思いますが、現在古本屋で2万円ぐらいで売ってますので興味のある方は買ってみてはいかがでしょうか。
 ちなみに私はその市販の取説は持っていないのですが中華航空用の取説を所持していますので、今回はそれをそっくりそのまま利用しようと思います(手抜き?)。


『三菱式MC20型旅客機 取扱説明書』中華航空株式会社 技術部 昭和15年11月より
扉ページ
1
主要諸元
主要諸元1
主要諸元2
主要諸元3
主要諸元4

性能
性能1
性能2
性能3
 ちなみにこれはいわゆる一型の性能です。発動機をハ102に換装した二型の性能は、陸軍航本技術部の資料によると全備重量は9200kg、最高速度は474km/h@5470mとのことです。



 短いですが、今回は以上になります。台風も近づいているようですので、皆さんもどうぞお気を付けください。
 ここでひとつトリビアを。熱帯低気圧が台風になるかどうかは、実は中心気圧ではなく風速で決まります。すなわち、最大風速が約17メートル(34ノット)以上の熱帯低気圧が台風となるのです。今回の「丸」9月号のAT機の記事で、要求事項を風速40メートルでの横風着陸と書いてありますが、そんなのは現代の技術をもってしても不可能でしょう。40キロメートルの誤りですね(笑)

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