はじめに
みなさんご無沙汰しております。今回の記事は、考察というよりも疑問に思ったことがあったのでそのことについて書いてみます。
というのも、『わが国航空の軌跡 研三・A-26・ガスタービン』という研三の性能に関する、当時の報告書関係を丸載せしたほぼ一次資料ともいえるかなり詳細な資料があるのですが、その第7章における水平最大速度の解析について、ピトー管の位置誤差修正の計算に誤りがあるように思えるのです。そして、結果として699.9km/hという最高速度も過大であったように思えるのです。
もちろん私の思い過ごしであればよいのですが、読者の皆さんの意見を伺うことができればと思い投稿いたします。
ただしこの記事は、その議論を行うにあたっての前提条件の説明になり、本番は次回の記事になります。知っているという方は特に読まなくても大丈夫です。
飛行機の様々な速度
まずは、飛行機の様々な速度の表し方について説明します。
一般に、航空機の速度の表し方には以下の5種類が存在します。
・IAS (指示対気速度 "Indicated Airspeed"):速度計で読み取った速度。
・CAS (較正対気速度 "Calibrated Airspeed"):IASに計器の誤差(=器差)やピトー管装備位置や飛行姿勢等による誤差(=位置誤差、P.E. "Position Error")を修正したもの。
・EAS (等価対気速度 "Equivalent Airspeed"):CASに対し、空気圧縮性の影響による誤差を補正したもの。
・TAS (真対気速度 "True Airspeed"):EASに対し空気密度の補正をしたもの。空気の流れに対する本当の速度。
・GS (対地速度 "Ground Speed"):TASに対し風の影響を加えたもので、実際の移動速度を表す。
普段私たちが「この飛行機の最高速度は〇〇km/hだ」、と言っているのはTASを指しますが、その計算にはパイロットが操縦席から直接確認できるIASからCAS、EASという段階を踏む必要があるのです。
IASからCASへ換算するときに必要となるのが、P.E.の測定試験です。これには、通常のピトー管に加え影響が少ない位置にピトー管を取り付けて計器速度の差を測定する方法や、決められたコースを往復飛行して求めた速度と計器速度とを比較する方法などがあります。P.E.は速度や飛行姿勢によって異なるので、測定はなるべく幅広い速度で、水平飛行時や上昇飛行時など様々な姿勢で行うことが必要となります。
CASから空気の圧縮性の影響による誤差を補正したものがEASとなります。高速になればなるほど空気の圧縮性の影響が効いてくるため、速度計に表示される速度は実際のものよりも過大に表示されます。M=0.3まではCAS=EASとして問題ないのですが、それ以上の速度では圧縮性の影響を考慮する必要があります。
TASはEASに空気密度比の補正を加えることによって計算します。というのも、ピトー管を利用した速度計は、気圧760mmHg、大気温度15℃のときの対気速度を表すように設定されているからです。したがって、TASからEASへは以下の式によって計算できます。
となるのです。なお、
また、空気密度は気圧と温度の関数ですので、
と表すこともできます。なぜTASだけ詳しく説明するかというと、次の記事の大事なところで出てくるからです。
飛行試験データの標準状態への換算方法
今回の話は飛行試験結果の解析の話ですから、当時使われていた試験結果を標準大気状態に換算する方法も説明しておきます。
水平速度の計測時に、計器速度の外に気圧高度と外気温も測定しておきます。そうすれば、その時のTASは②、及び③式で計算することができます。しかしながら、これはあくまでその時の大気状態における真速度ですので、標準大気状態で表さなければ他機や、同型機の別の日の試験結果との比較はできません。
そこで当時主に行われたのが、気圧高度と密度高度の中間をとる「ハーフ・アンド・ハーフ」方式です。これは、飛行試験時の気圧と外気温からその時の密度高度を求め、気圧高度と足して2で割った高度を標準高度とするものです。
気圧高度をZp、密度高度をZρとすると、密度高度は以下の式で表すことができます。
Zρ≒Zp+(測定気温-標準気温)*36.15・・・④
例えば、気圧高度Zp=3000m、外気温が11℃であったとしたら、④式より、
したがって、標準大気状態において3000+(560/2)=3280mの時の性能とみなすことになります。
以上が前提条件の説明となります。次の記事では、具体的に研三の性能解析の何に疑問があるのか説明していきたいと思います。
みなさんご無沙汰しております。今回の記事は、考察というよりも疑問に思ったことがあったのでそのことについて書いてみます。
というのも、『わが国航空の軌跡 研三・A-26・ガスタービン』という研三の性能に関する、当時の報告書関係を丸載せしたほぼ一次資料ともいえるかなり詳細な資料があるのですが、その第7章における水平最大速度の解析について、ピトー管の位置誤差修正の計算に誤りがあるように思えるのです。そして、結果として699.9km/hという最高速度も過大であったように思えるのです。
もちろん私の思い過ごしであればよいのですが、読者の皆さんの意見を伺うことができればと思い投稿いたします。
ただしこの記事は、その議論を行うにあたっての前提条件の説明になり、本番は次回の記事になります。知っているという方は特に読まなくても大丈夫です。
飛行機の様々な速度
まずは、飛行機の様々な速度の表し方について説明します。
一般に、航空機の速度の表し方には以下の5種類が存在します。
・IAS (指示対気速度 "Indicated Airspeed"):速度計で読み取った速度。
・CAS (較正対気速度 "Calibrated Airspeed"):IASに計器の誤差(=器差)やピトー管装備位置や飛行姿勢等による誤差(=位置誤差、P.E. "Position Error")を修正したもの。
・EAS (等価対気速度 "Equivalent Airspeed"):CASに対し、空気圧縮性の影響による誤差を補正したもの。
・TAS (真対気速度 "True Airspeed"):EASに対し空気密度の補正をしたもの。空気の流れに対する本当の速度。
・GS (対地速度 "Ground Speed"):TASに対し風の影響を加えたもので、実際の移動速度を表す。
普段私たちが「この飛行機の最高速度は〇〇km/hだ」、と言っているのはTASを指しますが、その計算にはパイロットが操縦席から直接確認できるIASからCAS、EASという段階を踏む必要があるのです。
IASからCASへ換算するときに必要となるのが、P.E.の測定試験です。これには、通常のピトー管に加え影響が少ない位置にピトー管を取り付けて計器速度の差を測定する方法や、決められたコースを往復飛行して求めた速度と計器速度とを比較する方法などがあります。P.E.は速度や飛行姿勢によって異なるので、測定はなるべく幅広い速度で、水平飛行時や上昇飛行時など様々な姿勢で行うことが必要となります。
CASから空気の圧縮性の影響による誤差を補正したものがEASとなります。高速になればなるほど空気の圧縮性の影響が効いてくるため、速度計に表示される速度は実際のものよりも過大に表示されます。M=0.3まではCAS=EASとして問題ないのですが、それ以上の速度では圧縮性の影響を考慮する必要があります。
TASはEASに空気密度比の補正を加えることによって計算します。というのも、ピトー管を利用した速度計は、気圧760mmHg、大気温度15℃のときの対気速度を表すように設定されているからです。したがって、TASからEASへは以下の式によって計算できます。
(1/2)*ρ0*EAS²=(1/2)*ρ*TAS²
EAS²=TAS²*(ρ/ρ0)
EAS=TAS*√(ρ/ρ0)・・・①
逆にEASからTASを求める場合は、
TAS=EAS/√(ρ/ρ0)・・・②
となるのです。なお、
ρ0・・・標準大気状態における地上の空気密度
ρ・・・飛行高度における空気密度
ρ/ρ0=(p/760)*(288/T)・・・③
p・・・飛行高度における空気圧力(mmHg)
T・・・飛行高度における外気温(K)
と表すこともできます。なぜTASだけ詳しく説明するかというと、次の記事の大事なところで出てくるからです。
飛行試験データの標準状態への換算方法
今回の話は飛行試験結果の解析の話ですから、当時使われていた試験結果を標準大気状態に換算する方法も説明しておきます。
水平速度の計測時に、計器速度の外に気圧高度と外気温も測定しておきます。そうすれば、その時のTASは②、及び③式で計算することができます。しかしながら、これはあくまでその時の大気状態における真速度ですので、標準大気状態で表さなければ他機や、同型機の別の日の試験結果との比較はできません。
そこで当時主に行われたのが、気圧高度と密度高度の中間をとる「ハーフ・アンド・ハーフ」方式です。これは、飛行試験時の気圧と外気温からその時の密度高度を求め、気圧高度と足して2で割った高度を標準高度とするものです。
気圧高度をZp、密度高度をZρとすると、密度高度は以下の式で表すことができます。
Zρ≒Zp+(測定気温-標準気温)*36.15・・・④
例えば、気圧高度Zp=3000m、外気温が11℃であったとしたら、④式より、
Zρ=3000+{11-(-4.5)}*36.15≒3560
したがって、標準大気状態において3000+(560/2)=3280mの時の性能とみなすことになります。
以上が前提条件の説明となります。次の記事では、具体的に研三の性能解析の何に疑問があるのか説明していきたいと思います。





















