本記事では一式陸上攻撃機一一型・一三型(G4M1)の主要3タイプの性能について紹介します。すなわち、
1.一式陸上攻撃機一一型(火星一一型)
2.一式陸上攻撃機一三型(火星一五型・非推力式集合排気管)
3.一式陸上攻撃機一三型(火星一五型・推力式単排気管)
の三つです。

 それぞれ簡単に説明すると、一一型が最初の量産機で、火星一一型エンジンを装備していました。一三型は高高度性能向上のために公称二速全開高度を4100mから6000mへ高めた火星一五型エンジンを装備した改良型です。なお、一一型・一三型ともに略符号はG4M1となっています。そもそも戦争中期までは火星一五型装備機であっても一一型と呼称されていました。
 一三型は途中から消炎効果を狙って排気管を下図のように、集合式から単排気管に改めています。副次的な効果としてロケット効果による速度の向上も確認されました。
排気管比較図

主要諸元
寸法(3タイプ共通)
 全長:19.97m
 全幅:24.88m
 翼面積:78.125m^2

発動機
 火星11型
  離昇:1530ps / 2450rpm / +250mmHg
  公称:1480ps@2200m / 2350rpm / +180mmHg
     1380ps@4100m / 2350rpm / +180mmHg

 火星15型
  離昇:1460ps / 2450rpm / +250mmHg
  公称:1420ps@2600m / 2350rpm / +180mmHg
     1300ps@6000m / 2350rpm / +180mmHg

重量
 一式陸上攻撃機一一型
  自重:7,000kg
  偵察正規:9,500kg
  攻撃過荷:12,500kg

 一式陸上攻撃機一三型
  自重:6,800kg
  偵察正規:9,500kg
  攻撃過荷:12,500kg

性能
一式陸上攻撃機一一型(第1号機試験成績)
偵察正規状態(9,500kg)にて
 最高速度
  236.0kt(437.1km/h)@2,400m
  240.0kt(444.5km/h)@4,200m

 上昇時間
  3,000mまで 5'33"
  8,000mまで 22'23"

 実用上昇限度 9,520m

一式陸上攻撃機一三型(非推力式集合排気管・第241号機試験成績)
偵察正規状態(9,500kg)にて
 最高速度
  234.5kt(434.3km/h)@3,100m
  244.0kt(451.9km/h)@5,900m

 上昇時間
  3,000mまで 5'27"
  8,000mまで 20'18"

 実用上昇限度 9,660m

一式陸上攻撃機一三型(推力式単排気管・第948号機試験成績)
偵察正規状態(9,500kg)にて
 最高速度
  239.0kt(442.6km/h)@2,800m
  248.0kt(459.3km/h)@5,450m

 上昇時間
  3,000mまで 5'26"
  8,000mまで 20'00"

 実用上昇限度 10,020m


おまけ
G4M1
 参考までに3タイプの高度別最高速度のグラフを作成しました。第1号機については推定部分が多いので点線としましたが、第241号機、948号機の性能は実測値に基づいています。
 低高度での性能は一一型が最優秀ですが、高高度では一三型に大きく差を開けられています。一三型は排気管を推力式にすることによって全高度帯での最高速度が向上しました。一方で全開高度が幾分低下している点が気になります。排気管の形状の違いが何か影響しているのでしょうか?それとも別の要因があるのでしょうか?
 なお、第948号機の実験成績については、アジア歴史資料センターwebサイトにて閲覧できます。


 今回も最後までお読み頂きありがとうございました。
 昨日今日と珍しく二日連続更新になりました。ネタが思いつけばどんどん更新していきたいと思っているのですが、なかなかそうもいかず更新が滞りがちになっています。また暫くは資料収集の時期に入りそうです。もちろん皆様からの情報提供もお待ちしています!!
 ところで今回初めてイラストも描いてみました。ボールペンで描いたものをスキャンしただけなのですが、少しでも分かりやすくなれば幸いです。