前回の疾風の性能に関する投稿にて詳細不明の性能データを紹介しましたが、その上昇性能のデータも入手しましたので、改めて紹介します。
〈前回記事:http://warbirdperformance.livedoor.blog/archives/2688737.html〉
全幅(span) 11.24m
全長(length) 約10.00m
翼面積(wing area) 21.00m^2
全備重量(gross weight) 3890kg(丙型)
エンジン性能(engine performance)
ハ45(Ha-45)
公称一速(rated) 1850PS / 3000rpm / 3400m
公称二速(rated) 1650PS / 3000rpm / 6000m
飛行性能
※甲型(飛行重量3400kg)にて計測
速度性能(speed performance)
高度 最高速度 回転数 吸気圧力
(Alt.) (Max. speed) (RPM) (mmHG)
1000m 545km/h 3000 +350
2000m 570km/h 3000 +350
3000m 595km/h 3000 +350
3700m 614km/h 3000 +350
4000m 610km/h 3000 +300
5000m 612km/h 3000 +350
6000m 630km/h 3000 +350
6650m 634km/h 3000 +350
7000m 625km/h 3000 +300
8000m 605km/h 3000 +200
上昇性能(climbing performance)
高度 上昇力
(Alt.) (Clim. time)
1000m 1'10"
2000m 2'15"
3000m 3'25"
4000m 4'30"
5000m 5'37"
6000m 6'50"
7000m 8'15"
8000m 10'18"
実用上昇限度:12500m
運転条件:3000rpm +350mmHG
過給機切換高度:3400m
少し考察
さて、上記データについていくつか考えてみたいと思います。
まず、試験に使用された機体とエンジンについてです。何号機が使用されたかについては全く分からないですし、プロペラ直径や排気管の形状も不明です。エンジンの運転条件を見る限り、運転制限なしでハ45エンジンを使用していることも読み取れます。運転制限下の疾風の最高速度が624km/hで、制限なしが634km/hだとすると丁度10km/hの速度アップしか得られていないことになり、乙型試作機が660km/hを出したという話が少し疑わしくなってきます。ただし上二つの試験結果が直径3.0mのプロペラと集合排気管で得られ、乙型試作機は3.1mのプロペラと単排気管を装備して制限なしのハ45エンジンで試験したと仮定すれば、あり得ない話ではないかもしれません。
もう一つの気になる点は、最高速度を発揮した高度です。この試験結果では1速で3700m、2速で6650mとなっていますが、同資料内のハ45エンジンの最適高度はそれぞれ3400mと6000mです。1速の300m程度の差であれば空気取入口の位置や形状でどうとでもなるでしょうが、2速で650mも差が出ているのは少し気になります。特に、運転制限下で624km/hを出した試験時の高度が6550mでしたから、それよりもブースト圧が上がっているのに全開高度も上昇しているというのがどうにも解せません。
全備重量についてもやや疑問です。資料中では3400kgで計測したとされていますが、色々な資料をみても疾風の全備重量は3600~3900kg程度ですから、明らかに軽すぎます。しかもその上での上昇性能が上記のような6000mまで6分50秒なのだとしたら相当に低性能だと言えます。なぜなら、与えらえた条件で計算すると2速公称時の馬力荷重が3400÷1650=2.06...となりますが、これは雷電11型や鍾馗2型に相当する値です。雷電が6000mまで5分38秒、鍾馗2型が5分36秒なのを考えると、6分50秒という数字はかなり悪いと言わざるをえません。
いずれにせよ、このデータの詳細な試験時期、試験機体、試験条件を調べてみる必要がありそうです。
〈前回記事:http://warbirdperformance.livedoor.blog/archives/2688737.html〉
全幅(span) 11.24m
全長(length) 約10.00m
翼面積(wing area) 21.00m^2
全備重量(gross weight) 3890kg(丙型)
エンジン性能(engine performance)
ハ45(Ha-45)
公称一速(rated) 1850PS / 3000rpm / 3400m
公称二速(rated) 1650PS / 3000rpm / 6000m
飛行性能
※甲型(飛行重量3400kg)にて計測
速度性能(speed performance)
高度 最高速度 回転数 吸気圧力
(Alt.) (Max. speed) (RPM) (mmHG)
1000m 545km/h 3000 +350
2000m 570km/h 3000 +350
3000m 595km/h 3000 +350
3700m 614km/h 3000 +350
4000m 610km/h 3000 +300
5000m 612km/h 3000 +350
6000m 630km/h 3000 +350
6650m 634km/h 3000 +350
7000m 625km/h 3000 +300
8000m 605km/h 3000 +200
上昇性能(climbing performance)
高度 上昇力
(Alt.) (Clim. time)
1000m 1'10"
2000m 2'15"
3000m 3'25"
4000m 4'30"
5000m 5'37"
6000m 6'50"
7000m 8'15"
8000m 10'18"
実用上昇限度:12500m
運転条件:3000rpm +350mmHG
過給機切換高度:3400m
少し考察
さて、上記データについていくつか考えてみたいと思います。
まず、試験に使用された機体とエンジンについてです。何号機が使用されたかについては全く分からないですし、プロペラ直径や排気管の形状も不明です。エンジンの運転条件を見る限り、運転制限なしでハ45エンジンを使用していることも読み取れます。運転制限下の疾風の最高速度が624km/hで、制限なしが634km/hだとすると丁度10km/hの速度アップしか得られていないことになり、乙型試作機が660km/hを出したという話が少し疑わしくなってきます。ただし上二つの試験結果が直径3.0mのプロペラと集合排気管で得られ、乙型試作機は3.1mのプロペラと単排気管を装備して制限なしのハ45エンジンで試験したと仮定すれば、あり得ない話ではないかもしれません。
もう一つの気になる点は、最高速度を発揮した高度です。この試験結果では1速で3700m、2速で6650mとなっていますが、同資料内のハ45エンジンの最適高度はそれぞれ3400mと6000mです。1速の300m程度の差であれば空気取入口の位置や形状でどうとでもなるでしょうが、2速で650mも差が出ているのは少し気になります。特に、運転制限下で624km/hを出した試験時の高度が6550mでしたから、それよりもブースト圧が上がっているのに全開高度も上昇しているというのがどうにも解せません。
全備重量についてもやや疑問です。資料中では3400kgで計測したとされていますが、色々な資料をみても疾風の全備重量は3600~3900kg程度ですから、明らかに軽すぎます。しかもその上での上昇性能が上記のような6000mまで6分50秒なのだとしたら相当に低性能だと言えます。なぜなら、与えらえた条件で計算すると2速公称時の馬力荷重が3400÷1650=2.06...となりますが、これは雷電11型や鍾馗2型に相当する値です。雷電が6000mまで5分38秒、鍾馗2型が5分36秒なのを考えると、6分50秒という数字はかなり悪いと言わざるをえません。
いずれにせよ、このデータの詳細な試験時期、試験機体、試験条件を調べてみる必要がありそうです。
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nce
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