『十五試双発陸上爆撃機実験(第四回報告)』空技廠・横空 昭和19年12月5日 より

・十五試双発陸上爆撃機(空技廠第3号機)

重量
 正規(normal) 9900kg
飛行性能
 最高速度
  5000m 287.5kt(532km/h)
  5900m 300.0kt(556km/h)
 上昇時間
  5000mまで 8分13秒


・試製銀河(中島第187号機)

主要寸法
 全長(length) 15.000m
 全幅(span) 20.000m
 全高(height) 5.270m(水平)
                4.300m(3点)

重量
 自重(empty) 7261kg
 正規(normal) 10500kg
 満載偵察(overload) 12242kg
 超過荷重(max. overload) 13372kg

発動機
 名称 誉11型(Homare 11)×2
 出力(output)
  離昇(take-off):1820PS@0m 2900RPM +400mmHg
  公称(rated):1650PS@2000m 2900RPM +250mmHg
        1440PS@5700m 2900RPM +250mmHg

プロペラ
 直径(diameter) 3.5m
 ピッチ変更角(pitch angle) 27°~51°

飛行性能
 速度性能(speed performance)
高度      最高速度       回転数   吸気圧力
(Alt.)     (Max. speed)      (RPM)    (mmHg)
      0m   237.0kt(439km/h)    2900    +250
1000m   250.0kt(463km/h)    2900    +250
2000m   262.5kt(486km/h)    2900    +250
2660m   271.0kt(502km/h)    2900    +250
3000m   271.0kt(502km/h)    2900    +211
4000m   270.0kt(500km/h)    2900    +250
5000m   283.0kt(524km/h)    2900    +250
5720m   292.0kt(541km/h)    2900    +250
6000m   289.5kt(536km/h)    2900    +215
7000m   278.0kt(515km/h)    2900    +97
8000m   264.0kt(489km/h)    2900    -15
9000m   246.5kt(457km/h)    2900    -118

 ※戦闘馬力試験成績
高度      最高速度       回転数   吸気圧力
(Alt.)     (Max. speed)      (RPM)    (mmHg)
1520m   250.4kt(464km/h)    2900    +250
1520m   267.1kt(495km/h)    2900    +400

 上昇性能(climbing speed)
高度    上昇時間    回転数   吸気圧力
(Alt.)     (clim. time)     (RPM)    (mmHg)
1000m   1'41"    2900    +250
2000m   3'25"    2900    +250
3000m   5'14"    2900    +148
4000m   7'17"    2900    +250
5000m   9'23"    2900    +250
6000m   11'38"          2900    +152
7000m   14'29"       2900    +42
8000m   18'23"       2900    -59
9960m   39'18" (service ceiling)


ソース(source)   『十五試双発陸上爆撃機実験(第四回報告)』航空図書館蔵
          "Examination report on 15-shi twin-engined land bomber"
          (Aeronautic Library)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

解説とコメント
 今回紹介した資料は空技廠による試験成績報告書で、原本は東京新橋の航空図書館に所蔵されています。この記事ではそのごく一部分を紹介しています。海軍の航空機は全てこのような性能試験報告書が作成されているはずなのですが、残念ながら銀河のほかに現存しているのは私の知る限り零水偵2式水戦などごくわずかです。

 さて、この報告書は空技廠製の試作3号機と比較して生産型である中島製第187号機の性能を確認することが目的でしたが、重量増加に伴う性能低下はあるものの実用に差し支えなしとの結論を得ています。
 試作機と生産機の差異については報告書内で詳細には触れられてはいませんが、具体的には、
・全備重量が生産機の方が600kg重い
・試作機は(推力式)集合排出管、生産機は単排出管
・尾輪が試作機は格納式、生産機は固定式
などが挙げられます。加えて工作精度の低下もあったものと思われます。結果として、生産機は試作機と比較して8ノットの速度低下があったようです。

 この報告書で興味深いのは、戦闘馬力の試験も実施されていることです。+400mmHg時は+250mmHg時と比べて高度1520mで約17ノットの増速効果を得ています。
 以下のグラフでは、青い丸および実線で187号機の速度性能を示しています。一方で戦闘馬力実験時の+400mmHgを赤丸で、+250mmHgを水色の丸で示しましています。グラフを見てもらえばわかるように戦闘馬力時の速度はもうちょっと出せそうですので、私の推定性能を赤い点線で示しています。なお、2速時の試験はなされなかった模様です。
P1Y1#187
 ところでこのグラフを見ていて思うのが、2速時の全開高度以上の速度低下が1速時と比べて急なんですよね。四式戦でも同様の傾向が見られるので、誉発動機の特徴と言えるかと思います。(参考記事)

 今回は以上になります。最後までお読みいただきありがとうございました。