あいち航空ミュージアムで2019/10/11~14まで世界一周飛行中の「シルバー・スピットファイア」が展示されています。今回は日本ではめったに見られないスピットファイアを見に行ってきました。

シルバー・スピットファイアとは
全景②
 このスピットファイアは現在世界一周飛行の途中です。ジュラルミン地そのままの姿から「シルバー・スピットファイア」と呼ばれています。2019年8月5日にイギリスを出発し、北米、ロシアを経由して遂に9月21日、日本の新千歳空港にやって来ました。その後花巻空港を経て10月10日に名古屋空港に降り立ち、11日夕方から名古屋空港に隣接した「あいち航空ミュージアム」で公開となりました。日本ではここでのみ展示されるようです。12日は台風のため休館でしたが、本日13日は快晴で非常に沢山の人が訪れていました。私も1時間近く並んで入場しましたよ。
全景③
 ちょっと違う角度から。このスピットファイアは型式で言うと「スピットファイアMk.IX」になります。1943年に製造され、「MJ271」のコードで欧州戦線で51回の作戦飛行を行ったそうです。現在は武装を外され機銃口もふさがれています。全身銀色に包まれたその姿は「戦闘機」の攻撃的な印象は全くなく、純粋に美しい「飛行機」として私たちを魅了してくれます。
全景⑤
 右側面から。この機体は戦後英空軍からオランダ空軍に移り、1954年に最後の空を飛んでから長い間翼を休めていましたが、60年以上の時を経て再び飛行可能にするというプロジェクトがスタート。約2年の修復作業ののち2019年7月に二度目の「初飛行」を迎えました。そして8月、高級時計メーカーIWCがスポンサーとなって世界一周の冒険が始まったのです。

機体クローズアップ
 もう少し近くでこの機体を見てみようと思います。そもそもスピットファイアMk.IX(マーク9)とはバトル・オブ・ブリテンを戦い抜いたMk.IとII、エンジンを強化した最多生産型のMk.Vに続いて登場した、Fw190Aに対抗するためにさらにエンジンを強化したタイプで、Mk.Vに次ぐ約5700機が生産されました。欧州戦線の終結まで3年近くも生産が続けられた非常に優秀な機体で、最高速度は高度8000m以上で約660km/hにも達しました。
前半分
 機体の前半分です。プロペラは4枚羽根で木製です。エンジンはロールス・ロイス社製のマーリン61シリーズを搭載しており、2段2速過給機を備えたこのエンジンは非常に優秀な高高度性能を持っています。キャノピーは視界の広いいわゆる「マルコム・フード」。左翼下には速度計測のためのピトー管がぶら下がっています。
機首
 機首は非常に滑らかで、プロペラ後流はスムーズに流れていくことでしょう。排気管は推力式となっています。
左翼上面
 スピットファイアの特徴のひとつである楕円翼は、空力的には理想的なのですが製作に手間がかかるという難点があり、現在はほとんど使われていません。高速時の横転性能を良好なものとするため、補助翼は途中から羽布張りではなく本機のように金属張りとなりました。無塗装なのでそれが良く分かります。ところで、この写真では見辛いですが主翼上面の胴体寄りのところに車輪格納部を覆う膨らみがあります。Bf109のG型にも似たような膨らみがありますが、空力的には純粋なマイナスです。
車輪
 車輪間隔の狭さはスピットファイアの欠点でした。離着陸時に不安定だという実運用上の欠点であるとともに、内股に見えてなんだかカッコ悪いというという欠点でもあります。
 両翼の下面にあるのはエンジン冷却ラジエーターで、機首下にあるのが滑油冷却器です。滑油冷却器と機体の間には境界層を考慮してか少し隙間があります。
エンブレム
 胴体には"SILVER SPITFIRE -THE LONGEST FLIGHT"のエンブレムが。機体表面は鏡のようにピカピカです。この写真では見切れていますが、本機の登録記号は「G-IRTY」です。
垂直尾翼左側
 お尻です。補助翼とは異なり方向舵も昇降舵も羽布張りとなっていて、色合いの違いが見て取れます。また、方向舵・昇降舵ともにタブが付いていて、飛行中にもトリムを調節できるようになっているようです。戦闘機は様々な速度域で飛行しますから、その時その時に合わせてトリムを調節できるとパイロットの負担は減ることになります。

おわりに
全景⑥
 ごく簡単な紹介でしたが、これで以上になります。おそらくスピットファイアを日本で見られる機会はあと数十年はないでしょう。とっても良い経験になりました。本記事で「シルバー・スピットファイア」を見に行けないという方々ともその感動をシェアできればと思います。
 また、最後に台風の被害がこれ以上広がらないことを祈っています。それでは。