WW2航空機の性能:WarbirdPerformanceBlog

第二次大戦中の日本軍航空機を中心に、その性能を探ります。

2020年03月

前回の疾風の性能に関する投稿にて詳細不明の性能データを紹介しましたが、その上昇性能のデータも入手しましたので、改めて紹介します。
〈前回記事:http://warbirdperformance.livedoor.blog/archives/2688737.html

全幅(span)       11.24m
全長(length)    約10.00m
翼面積(wing area)         21.00m^2

全備重量(gross weight)  3890kg(丙型)

エンジン性能(engine performance)
ハ45(Ha-45)
公称一速(rated)  1850PS / 3000rpm / 3400m
公称二速(rated)  1650PS / 3000rpm / 6000m

飛行性能
※甲型(飛行重量3400kg)にて計測
速度性能(speed performance)
高度    最高速度      回転数    吸気圧力
(Alt.)   (Max. speed)     (RPM)     (mmHG)
1000m   545km/h     3000     +350
2000m   570km/h     3000     +350
3000m   595km/h     3000     +350
3700m   614km/h     3000     +350
4000m   610km/h     3000     +300
5000m   612km/h     3000     +350
6000m   630km/h     3000     +350
6650m   634km/h     3000     +350
7000m   625km/h     3000     +300
8000m   605km/h     3000     +200

上昇性能(climbing performance)
高度    上昇力
(Alt.)   (Clim. time)
1000m    1'10"
2000m    2'15"
3000m    3'25"
4000m    4'30"
5000m    5'37"
6000m    6'50"
7000m    8'15"
8000m   10'18"
実用上昇限度:12500m
運転条件:3000rpm +350mmHG
過給機切換高度:3400m


少し考察
 さて、上記データについていくつか考えてみたいと思います。
 まず、試験に使用された機体とエンジンについてです。何号機が使用されたかについては全く分からないですし、プロペラ直径や排気管の形状も不明です。エンジンの運転条件を見る限り、運転制限なしでハ45エンジンを使用していることも読み取れます。運転制限下の疾風の最高速度が624km/hで、制限なしが634km/hだとすると丁度10km/hの速度アップしか得られていないことになり、乙型試作機が660km/hを出したという話が少し疑わしくなってきます。ただし上二つの試験結果が直径3.0mのプロペラと集合排気管で得られ、乙型試作機は3.1mのプロペラと単排気管を装備して制限なしのハ45エンジンで試験したと仮定すれば、あり得ない話ではないかもしれません。
 もう一つの気になる点は、最高速度を発揮した高度です。この試験結果では1速で3700m、2速で6650mとなっていますが、同資料内のハ45エンジンの最適高度はそれぞれ3400mと6000mです。1速の300m程度の差であれば空気取入口の位置や形状でどうとでもなるでしょうが、2速で650mも差が出ているのは少し気になります。特に、運転制限下で624km/hを出した試験時の高度が6550mでしたから、それよりもブースト圧が上がっているのに全開高度も上昇しているというのがどうにも解せません。
 全備重量についてもやや疑問です。資料中では3400kgで計測したとされていますが、色々な資料をみても疾風の全備重量は3600~3900kg程度ですから、明らかに軽すぎます。しかもその上での上昇性能が上記のような6000mまで6分50秒なのだとしたら相当に低性能だと言えます。なぜなら、与えらえた条件で計算すると2速公称時の馬力荷重が3400÷1650=2.06...となりますが、これは雷電11型や鍾馗2型に相当する値です。雷電が6000mまで5分38秒、鍾馗2型が5分36秒なのを考えると、6分50秒という数字はかなり悪いと言わざるをえません。
 いずれにせよ、このデータの詳細な試験時期、試験機体、試験条件を調べてみる必要がありそうです。

はじめに
 紫電11型は1,000機を超えるその生産数の割には存在感の薄い機体になってしまっています。後継の紫電改があまりにも有名になりすぎてその陰に隠れてしまっており、その性能についてもよく整理されているとは言い難いでしょう。
 今回はその紫電11型の性能について考えていきたいと思います。

紫電11型とは?
 いつも通り簡単な機体説明から参ります。紫電を開発した川西航空機は97式大艇や2式大艇などの傑作飛行艇を世に送り出した水上機を得意とするメーカーで、飛行場の整備されていない太平洋上の島々のための水上戦闘機を開発するよう海軍に命じられます。これは開戦前の1940年のことで、この計画は十五試水上戦闘機と呼ばれました。
 ところが本機は太平洋戦争の開戦には間に合わず、「強風」として制式採用されたのは既に水上戦闘機が必要ではなくなった43年になってからでした。結局大事なときに活躍したのは零戦を水上戦闘機に急遽転用した二式水戦でした。
 一方川西側でも水上機だけの生産では会社の経営は苦しくなるだろうと考えており、開発の進んでいた強風の設計を流用して短期間で陸上戦闘機を開発することを41年12月海軍に提案。本命の雷電の保険としての意味合いもあって仮称一号局地戦闘機として計画は了承され、翌42年12月に1号機が完成しました。搭載していた誉エンジンが当初の馬力を出せず予定性能には全く届かなかったものの、少なくとも零戦よりは高速で武装も強力であったことから43年8月から量産に入りました。
 機体は強風の設計を流用した中翼配置でした。そのため主脚がどうしても長くなってしまい伸縮機構が取り付けられましたが、これに起因する故障がかなり多かったようです。
 武装は20mm機銃4門と重武装で、当初は翼内に1門、翼下にガンポッド形式で1門を各翼に装備していましたが、改修型である紫電一一乙型ではすべて翼内装備となっています。
 最終的に千機以上が生産されフィリピンの戦いや沖縄戦、本土防空戦に参加しましたが、優勢な敵軍を前に終始苦しい戦いを強いられました。
N1K1-J

計画性能値
それでは性能の話に入っていきます。まずは計算上の計画性能値から。

最高速度 298kt(552km/h) @ 0m
     353kt(654km/h) @ 6,000m
上昇時間 2,000mまで 1'45"
     6,000mまで 5'50"
実用上昇限度  12,100m
絶対上昇限度  12,250m

この数字は公式の取扱説明書に記載されているものです。
もしこの数値通りの性能が発揮できていれば超優秀機なのですが、実際はそうではありませんでした。

実測性能
計画に反し、実際のテストの結果は以下のようであったと伝えられています。

最高速度 290kt(537km/h) @ 3,000m
     308kt(570km/h) @ 5,600m
上昇時間 6,000mまで 7'00"
実用上昇限度  10,000m

 これが何号機で計測されたものなのかは不明で、そのため単排気管や補助冷却器の有無などは分かりませんが、ここまでの計画値割れの原因は誉エンジンのせいと考えられます。
離昇2000馬力の誉21型搭載として計算されていましたが、実際には運転条件を落として離昇1820馬力とした誉11型を装備していました。
〈参考:http://warbirdperformance.livedoor.blog/archives/2874860.htmlhttp://warbirdperformance.livedoor.blog/archives/3700030.html
他にも予定になかった翼下ガンポッドの追加や工作の不良などが性能不足の原因として指摘されています。

他にも、海軍の性能表には315kt(583km/h)@5,900mという数値(6,100mという数値もあり)も残されており、こちらがよく知られている紫電11型の最高速度ではないかと思います。このデータについても機体のコンディションが全然分からないのですが、エンジン運転制限下での実測数値であることにまず間違いはないと思われます。

それ以外の性能値
 上記に紹介した以外にもいくつか数値を見つけました。ひとつは別冊航空情報『設計者の証言 上巻』で紫電の設計者菊原静男氏がさらーっと書いている「高度6,000mで320kt(593km/h)」という数字です。※添付画像参照
IMAG0163

 それ以外にも、米軍が戦地で鹵獲したノートによると「44年4月に最終試験が予定されており、誉10シリーズエンジンを装備し、高度6,000mで325kt(602km/h)を発揮する」との記載があります。(JICPOA BULLETIN No.94-44 1944/5/2)
 このノートの原文を見たことはないのですが、菊原氏やこの記述を見ると、今まで思われていたよりも紫電はスピードが出るようです。考えてみると、紫電改が運転制限下で620km/hを出すことができたなら紫電が600km/h近い速度を出すことができていても不思議ではないはずです。

まとめ
 まとめに入っていきましょう。紫電の性能はエンジンの運転制限によって計画値を大きく下回ってしまいましたが、今まで思われていたよりもスピードを出すことができていた可能性があります。
 ここで戦後に出版された書籍での紫電のデータについてひとこと。海軍が公式にまとめた性能表がいろいろなソースのつぎはぎとなっていて、最高速度が583km/hなのに上昇時間が6,000mまで5分50秒、上昇限度が12,100mとなっているせいで戦後の出版物もこの数値を紹介しているものが多いです。ここまで読んで頂いた皆様にはお分かりかと思いますが、計画値とそうでないものの区別はしっかりとつけるよう注意しなければなりません。
 『丸メカニック記載』の紫電の上昇時間は「強風」のデータというとんでも落とし穴もありますから、本記事では信頼できるデータを提供できるように頑張っていきます。
 また、紫電の上昇性能について6,000mまで7分50秒とする出版物もいくつか見られます。実は私はこれにも少し疑問を持っています。というのも戦時中の一次資料にこの数値を見つけることができないからです。もしかすると、5分50秒という数字が「妙に良すぎる」と思った誰かが紫電改の6,000mまで7分22秒という数字を見て「紫電改よりも良いはずがないから」と7分50秒の誤記だと勘違いしたのかもしれません。しかしながら紫電の全備重量は紫電改よりも軽いので(海軍性能表なら紫電3900kg・紫電改4000kg。取説なら紫電3750kg・紫電改3800kg)、同じエンジンで同じ翼面積なら紫電の方が上昇性能が良くても別におかしくはないと思います。実際6000mまで7分というデータが残っていますから。

 さて、今回の記事はこんな感じですが、紫電の性能については未知の部分が多く、まだまだ調査を進めていくつもりです。次回がいつ書けるか分かりませんが、気長にお待ちいただければと思います。

はじめに
 雷電に搭載されたことで知られる火星23型/23甲型ですが、その馬力性能について「所定の馬力が出ていなかった」との証言があるように、資料によって性能値に(特に高空性能に)ばらつきが見られます。
  本記事では、これらの違いについて整理し、火星23型の本当の性能について考えてみたいと思います。

火星エンジンとは?
 まずは「そもそも火星エンジンとはなんなのか?」といったところから始めていきたいと思います。「火星」は三菱重工が「金星」や「瑞星」に続いて、今度は爆撃機への搭載を主目的として開発したエンジンで、1938年2月に開発に着手したとされています。当時の国産エンジンの中では最大の馬力を誇っており、最初の量産型である火星11型は当時の最新鋭機1式陸攻に装備され、陸軍型の「ハ-101」は97式重爆二型に性能向上のため装備されました。
 また、戦闘機に搭載するには直径が大きすぎるにも関わらず当時使用出来る中では最大馬力のエンジンだったため、十四試局戦(後の雷電)や十五試水戦(後の強風)のエンジンとして採用されます。大直径エンジンをどうやって単発戦闘機の胴体にフィットさせるのか、その苦労の結果が雷電や強風の独特のフォルムに現れています。火星エンジンの初期シリーズは11型から15型まで存在し、13~15型は過給機の翼車径を増し高高度性能を向上させています。
以下は「火星11型」の詳細スペックです。
 形式         星形空冷複列14気筒
 直径×全長        1,340mm×1,705mm
 内径×行程×圧縮比   150mm×170mm×6.5
 排気量        42L
 離昇出力       1530PS / 2450RPM / +250mmHg
 公称一速       1480PS / 2350 RPM / +180mmHg @2,200m
 公称二速       1380PS / 2350 RPM / +180mmHg @4,100m
 減速比        0.684
 使用燃料       離昇:100オクタン 公称以下:92オクタン
 過給機        機械式1段2速 / 翼車径:280mm / 増速比:一速 7.4、二速 9.12
 乾燥重量       725kg

火星20型
 火星10シリーズの性能向上型として開発されたのが火星20シリーズです。10型と20型の一番大きな違いは水・メタノール噴射装置の有無です(※14型を発展させた二重反転プロペラ装備用の24型を除く)。高オクタン燃料の入手が難しくなったことから、その代用として導入されました。これによって許容ブースト圧が大幅に向上し、離昇馬力で言えば11型の1530馬力から21型の1850馬力へ300馬力近いパワーアップを達成しています。
以下は火星22型の詳細スペックです。
 形式         星形空冷複列14気筒
 直径×全長        1,340mm×1,753mm
 内径×行程×圧縮比   150mm×170mm×6.5
 排気量        42L
 離昇出力       1850PS / 2600RPM / +450mmHg
 公称一速       1680PS / 2500 RPM / +300mmHg @2,100m
 公称二速       1540PS / 2500 RPM / +300mmHg @5,500m
 減速比        0.5
 使用燃料       公称以上:87オクタン+水アルコール
 過給機        機械式1段2速 / 翼車径:320mm / 増速比:一速 7.4、二速 9.12
 乾燥重量       750kg

 
そして火星23型
 その火星20シリーズを、10シリーズでは予期していた性能に達しなかった十四試局戦に搭載するために改造したのが火星23型です。20シリーズの特徴である水・メタノール噴射装置に加えて、延長軸と強制冷却ファンも装備。使用燃料も87オクタンから91オクタンとしています。
以下は火星23型の予定スペックです。
 形式         星形空冷複列14気筒
 直径×全長        1,340mm×1,945mm
 内径×行程×圧縮比   150mm×170mm×6.5
 排気量        42L
 離昇出力       1900PS / 2600RPM / +450mmHg
 公称一速       1720PS / 2500 RPM / +300mmHg @2,100m
 公称二速       1580PS / 2500 RPM / +300mmHg @5,500m
 減速比        0.54
 使用燃料       公称以上:91オクタン+水アルコール
 過給機        機械式1段2速 / 翼車径:320mm / 増速比:一速 7.4、二速 9.12
 乾燥重量       835kg

 ただし、この火星23型は十四試局戦に搭載したところ大きな振動を生じ、これがクランクとプロペラのうねり現象によるものだとして、生産の不便をしのんでプロペラ減速比を0.54から0.5に変更。そして気化器式から燃料噴射ポンプ式にも改められました。これが火星23甲型です。とある資料では発揮馬力に大きな変化はないものの、乾燥重量が860kgと増加しています。
 一方で海軍作成の実験機の性能一覧表などを見ると、火星23甲型搭載の雷電の性能推算は以下のような数値で行われていたようです。
 離昇    1900PS
 公称一速  1680PS @2,100m
 公称二速  1510PS @5,700m
 最高速度  349kt(646km/h)
 上昇時間  6,000mまで4'59"

 無印23型と比べて若干の高空性能の低下が見られるようですが、この辺りの性能の細かい変化についてはよく分かりません。ただし、この計算時点では他国に引けをとらない優秀インターセプターが予想されていることが分かります。

期待以下の実測性能
 ところが、皆さんもご存じのように実際の雷電の性能は上記の推算結果に全く及びませんでした。原因は複数挙げられますが、一番大きなものはエンジン性能が予定通り出ていないというものでした。(他の原因としてはプロペラ剛性を高めたためプロペラ効率が低下したこと、滑油冷却器の大型化などが挙げられます。)どうにも大戦中の発動機(特に火星や誉)は高空性能が台上試験に基づく結果と大きく異なっており、最高速度が計画値を大きく下回ることとなってしまいました。高空馬力算定方法に誤りがあったのではないかと三菱で再検討した結果、火星23甲型の二速公称性能はどうやら高度4,800mで1410馬力ということになったようです。
 一方、多くの出版物に引用されておりよく見かける火星23甲型の性能値も最初の予定スペックを下回っており、二速公称性能は高度4,100mで1520馬力となっています。この数値は雷電の仮取扱説明書にも記載されており、ひとつの「公式性能」とみることもできます。この性能値と三菱値の関係についてはよく分からないのですが、どうやら取説に載っている数値は空技廠の試験によるもののようです。
 以下に、火星23甲型の予定、海軍、三菱のそれぞれの性能をまとめます。当初の予定性能に達しなかったのは確実と言えます。
        予定        海軍        三菱
 離昇  1900PS                       1820PS       1800PS
 一速  1720PS@2,100m  1600PS@1,300m  1575PS@1,800m
 二速  1580PS@5,500m  1520PS@4,100m  1410PS@4,800m

ところで、連合軍による雷電の性能予想は?
 ところで、よく「米軍による試験の結果雷電は非常に優秀な性能を示した」と言われることがありますが、果たしてこれは本当なのでしょうか?残念ながら、答えはNOだと言えます。
 鹵獲機の飛行試験レポートによると"No air speed was obtained as the oil pressure failed before the run could be stabilised."と書かれており、発動機不調のため全速飛行試験は実施できなかった模様です。
 雷電のwikipediaでは、「フィリピンでアメリカ軍に接収された二一型初期生産機(製造番号3008号機)である鹵獲機「S12」を用いたテストでは、最高速度671 km/h(高度5,060 m)、上昇力5分10秒/高度6,100 m と日本側の諸元値を大幅に上回る結果を残している(試験環境における燃料は、92オクタンの燃料に水メタノール噴射を組み合わせたものである。試験時の重量は、7,320 lb(3,315 kg)であり、これは180 kg ほど軽い。(2020/3/8閲覧)」と、さも実際にこれほどの高速を発揮したかのように書かれていますが鵜呑みにするのは危険です。以下に原資料を載せますが、このwikipediaの記述はTAICが作成した日本軍の各機体の情報"TAIC MANUAL"に基づいていると考えられます。しかしこの資料内の性能値は実測値が載っているわけではなく、鹵獲した日本資料や鹵獲機の試験等を基にした連合軍による推測です。このことは原資料の前書きにもはっきり書かれています。
TAIC-Jack21
 上述したように、鹵獲雷電では全速試験は行われていませんから、性能計算はエンジン性能に拠るところが大きくなります。ということでエンジン馬力に注目してください。"Take-off"が1870HP、"Military"が1695HP@6,800ft、1560HP@18,100ftとなっていますが、以前の記事『国ごとのエンジン性能の表記の違い』(http://warbirdperformance.livedoor.blog/archives/2727988.html)の英馬力から仏馬力への換算式を当てはめると、火星23型の当初の予定性能と一致するのです。
 つまり、この性能推算時には「真実の」火星23甲型エンジンの性能情報を連合軍は入手しておらず、「誤った」予定性能に基づいた性能計算結果がここには示されているのです。残念ながら最高速度671km/hの雷電はまぼろしの存在なのです。

まとめ
 さて、今回は火星23型の性能について考えてみました。当初は優秀な馬力性能が予定されていましたが実際はそれを大きく下回る性能しか発揮できず、それに伴って雷電の最高速度も期待を裏切る結果になったことが分かったかと思います。連合軍も火星23型のまぼろしの予定性能馬力に踊らされ、過剰に雷電の性能を見積もっていました。それが戦後の海外での雷電の高評価に繋がるのはなんとも皮肉な話ではありますが。
 今回も最後までお読みいただきありがとうございました。最後に参考資料をいくつか置いておきます。

①CINCPAC-CINCPOA BULLETIN No.130-44 (1944/8/23)
0193275
火星23型エンジンの性能表です。米軍はかなり細かい部分までその性能データを持っていました。ただ、そのような性能は実際は実現しなかったのですが、、、

②仮取扱説明書要目表
3853805
学研の『太平洋戦史シリーズ29 局地戦闘機雷電』にこの要目表が載っています。これが実際の性能だったと考えられます。

③TAIC MANUAL抜粋
jack11-2
 1944年12月付の雷電11型の連合軍による性能データです。最高速度のところに注目してもらうと、"Military"時の最高速度が20,000ft付近で402-3マイルになると思います。これをメートル法に換算すると高度6,000m付近で650km/h弱になります。これは当初の火星23型搭載雷電の日本側の性能推算値とぴったりです。
TAIC-Jack21graph
 これは雷電21型の1945年5月付の性能データです。本文中に載せたJack21のデータのひとつ前のページになります。ここでも最高速度を見てみましょう。"Military"馬力では高度18,000ftで406-7マイル程度でしょうか。日本側のデータを基にしつつも、連合軍側で細かく修正していっているようです。
 ほかの機体のデータなんかは国会図書館デジタルライブラリー(ここ)で見ることができます。

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